2026/01/27 9:00 (GMT+9)
2026年。大規模言語モデル (LLM) が一定の成功を収め、RAG という知識ベースを持ち、MCP という手足を得て、AIエージェントとして組み合わさった。AIエージェント同士のプロトコル A2A により複数エージェントの強調動作ができるようになってきている。
Microsoft の Copilot をはじめ、今後はあらゆるアプリケーションソフトウェアにAIが組み込まれていくだろう。VSCodeには真っ先に開発支援AIが組み込まれ、プログラムを買いている途中で、続きを提案してくれた。デバッグも手伝ってくれる。AWS Kiro はそれに対抗し、作りたいプログラム仕様を作るところから手伝ってくれるし、クラウドへのデプロイもやってくれる。 エクセルやパワーポイントなどの Microsoft 365 、SharePointなども含めて、Copilot は横断的にビジネス文書の作成や資料検索を効率化している。
神林長平のSF作品『言壺』(1994)には、AI支援ワードプロセッサ「ワーカム」というガジェットが登場する。このワーカムは、不適切な文章を書くと警告を発したり文章修正をしてくれる便利機能が付いている。作中の例では「わたしの姉は母だった」と書くと、そのようなことはありえないと指摘する。VSCode でプログラムを書いているときに、文法エラーをその場で指摘するLint とは違い、意味を解釈した上で誤りを指摘するところがAIだ。
このワーカムというガジェットは、同作者の人気作品『戦闘妖精・雪風』(1984)にも輸入された。『戦闘妖精・雪風<改>』(2002) で改稿されたときに、語り役のジャネット・ジャクソンが記事を手書きで書くかワーカムを使うか、という記述が入る。そして、ワーカムで書いていたら違った記事になっていただろう、という思索が出てくる。 現在のAIの姿を、そして文書作成者の気持ちを実によく代弁したシーンだ。
Microsoft Word はいうに及ばず、Outlook のメールなどもAI が文書校正をしてくれるし、書く内容を提案してくれるようになっている。ビジネス文章であれば便利だなで済むことだが、小説や原稿などの執筆者の想いの強い創作物では迷惑な機能である。小説をVSCodeで書いている人も多い。Adobe Photoshop などの絵画・写真系の画像ソフトウェアでも同じだ。
自分が書きたいことを書きたいように書くということは、創造主にとっては大事なことであると感じている。技術的に及ばない部分についてはAI支援をしてほしいときもある。自分できることは自分でやりたい。そこが楽しさを感じる源泉であり、それをAIに剥奪されたくない。そしてAIにやらせると、たいてい気に入ったものにはならない。
AI支援機能は現在のところ、アプリケーションに個々に組み込まれている。アプリケーションの機能に特化したAI である。それが最もうまくいくであろう。 もっと基本的な基盤部分に組み込まれたAI であれば、アプリケーションを横断的に見れるようになるだろう。例えばブラウザ、例えばOS、そしてハードウェア。
マルチAIエージェントの構造では、こうしたAIエージェントに指示を出す上位のAIエージェントはSupervisorエージェントと呼ばれる。アプリケーション個別のAI はアプリケーションを上手に扱うことができるが、それらはアプリケーションの中の情報しか持たない。
人間は自分の活動の目的と周囲から得ている関連する全ての情報を元に判断する。そのため、自分の隣にいて同等の情報量を得ているお手伝いさんがいるのが理想だ。かねてより、秘書、執事、メイドなどの主人に仕える役割を上流階級の人間は持っていた。AIエージェントというのは、その役割を全ての人類に提供できる可能性がある。少なくともコンピュータ内の電子世界において、自分の秘書がいるということは現実的になってきた。 そして将来的には、人間が現実世界から受け取る情報も、ARゴーグルなどのデバイスで電子化することで、AIエージェントに伝えることができるだろう。 そう考えて書いたのが『回帰不能点の通過記録』だ。そうしたお手伝いAIエージェントは、谷甲州のSF作品『ヴァレリア・ファイル2122』(1987) で描かれている。拙作のAIエージェントは、このアイディアを借用している。
エージェントはネットワーク上に常駐しており、人間が端末を代えても同じ記憶を引き継いだキャラクタが、今まさに使っているコンピュータ上に現れる。自分の友人として、頼れるパートナーとして、自分と共に成長するAIエージェント。残念ながら現在のLLMもコンピュータリソースもネットワークですら、その域には達していない。AIの自律性やセキュリティ、法的整備など課題は多い。
産まれたばかりのAIエージェントは、これから進歩していくことは間違えないが、まだまだブレイクスルーが幾つも必要である。それまでの間は、使い分けをしていかないといけない。AI機能のOFF/ON機能は必須だし、使いどころを人間は見極めないといけない。初めてのことが多いので、試してみる、実験するということを繰り返すこととなるだろう。
この記事は一文字づつぼくが打ち込んだ。もしAI支援機能を使って書いたら文章は平均化され、ぼくらしい文章にも記事にもならなかっただろう。